member’s story:かずなんの話。

みんながお互いにプレイヤーとしての居場所を確保できている。だから、音楽との付き合い方を、自分なりに確立することができた。

新じゃがポテチにテンション爆上がり。

派手さより、いつも確かなベースラインでバンドのボトムを支える。多士済々なばんけんベーシストの中でも、プレイへの信頼性は抜群なのが、かずなんです。けれど意外なことに、東京バンド研究会への道のりは、単純なものではなかったみたいです。

『若いころ、2~3年くらい、けっこうガチでバンドやってた時期があって。その頃はプロになりたいな、とか思ってたんですけど、結局うまくいかなかった。そこから、いったん音楽から離れてたんですよね。たまにスタジオ入るくらいで。音楽が嫌いになったわけじゃないけど、しばらくいいかな、って。けど、たまたまFacebookで東京バンド研究会をみつけました。こういう形で音楽活動に参加する道もあるのか、って。大学のときに軽音サークルだったんで、活動のイメージはなんとなくつかめました。それで、いっぺん行ってみようかな、って。』

個人で問い合わせると、Coccoコピーバンドを紹介され、参加することに。

『なんか、普通に楽しかったですね。そのときのボーカルだった女性の方が、スタッフさんとかじゃなかったけど、けっこう参加歴の長い人だったみたいで、いろいろ世話を焼いてくれて。最初は彼女に引っ張られるかんじで、出入りするようになりました。ぼくも積極的に他人とコミュニケーションが取れるタイプじゃないんで、そういうのはありがたかったですね。ぼくの名前、「かずなり」っていうんですけど、「かずなん」って呼びはじめたのは彼女からです。それもいつのまにか広がって、みんなに憶えてもらえるようになって』

そこから何度も参加し、常連になっていく。いま、思うこととは。

『ベーシストとして音楽をやるなら、いずれバンドに入ってオリジナル曲でプロを目指すとか、ジャズセッションとかで長尺のソロを弾けるようになるのが普通。なんとなく、そういう見方ってあるような気がするんですよね。でも、東京バンド研究会では、そういうことを考えなくていい。本当に誰でも、たくさんの仲間の前でステージに上がれて、拍手がもらえる。共演者たちとマウントを取り合う必要はない。こういう場が、自分にはぴったりだな、って思うんです。』

ありのままで、自然体に。いろんな経験からたどり着いた、かずなんの音楽との付き合い方。

『正直、ベーシストとして上を目指したい、みたいなのはあんまりありません。新しいテクニックを身に着けたりとか、もっといいプレイヤーになるために努力する、みたいなことはもういいかな、って。いまの自分でできることをする。それ以上でもそれ以下でもない。足元にエフェクターをいっぱい並べたりもしない。歪みもコーラスも使わない。フィンガーピッキングもやらない。スラップもしない。多弦ベースも買わない。オリジナル曲も、アレンジも、ソロもやらない。ピック弾きでゴリゴリやる、それしかできません。自分はそれでいい。そして、そういう自分を必要としてくれる人とバンドができればいい。』

『もちろん、向上心を持って、努力して技術を磨いて、誰よりも上を目指すマインドの人もカッコいいと思う。リスペクトしてます。けど、そんな人ばっかりじゃなくてもいい。ビートがヨレヨレだったり、プレイが途中で切れたりする人も、みんな充実感を持って参加してるわけで。そういう人にも拍手を贈る。それもすごい意味のあることだと思います。経験もスキルも性別も年齢も関係なく、みんながお互いにプレイヤーとしての居場所を確保できているから、長く続けられるんでしょうね。』

ばんけん雪山部の常連でもあるのだ。