015 作詞のレトリック#03:直喩
前回、ある言葉を形容することで、よりイメージがくっきりと浮き上がることを説明しました。そして、形容の方法には、いくつかの種類があります。その代表的なひとつが、比喩。あるものを、別の何かに例えることです。
そして、比喩表現は、その形式によって二種類に分かれます。ひとつは、比喩であることを明確に示す「直喩」、もうひとつは、比喩である文言を隠す「暗喩」です。
直喩は、比喩であることを明確に示す言語表現のことです。「桃のような頬」「嘘みたいな話」「悲しみに似た淋しさ」など、これはたとえ話ですよ、ということがわかりやすい叙述ですね。「ような」「みたいな」などが定番の語句として使われます。
実際の歌詞を見てみましょう。
決して捕まえることの出来ない花火のような光だったとしたって
HANABI/Mr.Children(作詞・桜井和寿)
一瞬だけパッと光ってすぐに消えてしまう、けれどその鮮やかな光の集まりと広がりは、観客の心に強い印象を残します。そういった花火のような、いつまでも忘れられない輝きを胸に抱いた男の心情が、切なく描かれていますね。
ひまわりのようなまっすぐなその優しさを温もりを全部
ひまわりの約束/秦基博(作詞・秦基博)
これからは僕も届けていきたい
ひまわりは太陽に向かって大輪を広げる花。その存在感は、目標に向かってまっすぐに突き進む姿、光をいっぱいに浴びて輝く姿の形容にぴったりです。
いつまでも忘れはしないよ 君に会えた夏の日を
いつまでも変わらぬ愛を/織田哲郎(作詞・織田哲郎)
きらめく風の魔法の様に この胸のDaydream
現在アラフォーのニシバタが中学生くらいの頃、ポカリスエットのCMで流れていた曲。一色紗英さんの透明感と少しの色気に翻弄されまくっていました。確かにひと夏のある日に彼女に会えたら、それはまさに「きらめく風の魔法」だよな、と深く納得したことを思い出します。織田さんにとってこの作品は、夭折した兄への鎮魂歌だったようですが、素晴らしい作品はいろんなシチュエーションで強くリスナーの心に響くものだ、というのを実感させられます。言葉、メロディ、アレンジ、すべてが最高峰の1曲です。