013 作詞のレトリック#01:レトリック基礎論
これまで、作詞の全体構成とそれぞれのパートの役割、一般的なテーマにいたるまで、いわゆる基礎知識について解説しました。参考になっていれば嬉しいです。ここからは、具体的な表現技法について説明したいと思います。
レトリック、という言葉を知っているでしょうか。「修辞法」と訳されることもあります。これは、ことばによる表現をいかに美しく、巧妙におこなうか、というテクニックのことです。その起源は古く、紀元前のギリシア、ローマ時代から研究されてきました。数千年の蓄積がある学問です。
具体的に見てみましょう。次の写真を説明してみます。
草原に朝日が昇る。遊歩道が延びている。
なんの修辞もない表現というと、こんなところでしょうか。特に印象に残るところはありませんね。
では、次の表現はどうでしょう。
見渡す限りの草原に、大きな強い太陽が昇る。
古びた遊歩道が、曲がりくねりながら延びている。
少し、いきいきとした表現になったのではないでしょうか。
生まれたばかりの、力強く空に向かって伸びる青葉を、朝の太陽があたたかく包む。
生命の息吹を吸い込もうとする人々を、朽ちかけた遊歩道が静かに待っている。
回りくどいほどに修辞を利かせた表現ですが、内容は最初の文と同じです。
つまり、同じようなことでも、表現の仕方は限りなくある、ということです。それこそ、書く人の数だけ表現がある、といってもいいくらい。最初の例のような文だけでは、なかなか作詞として成立させるのは難しいでしょう。工夫を凝らして、いろんな表現を用いる必要があります。その工夫を体系化したのが、レトリックだといってもいいかも知れません。
ここからは、レトリックのうち、特に重要な技法、よく用いられる技法をいくつか紹介していきたいとおもいます。あるものごとを、こうやって表現すれば、より豊かな作品になるのではないか。そう考えるヒントになれば嬉しいです。